トヨタ生産方式、トヨタウェイを語るときには「恕」の意味をいつも語る様にしています。これは孔子の教えから来ています。中国人の知り合いからもこの恕についての賛同を貰いました。彼は中国でTPSを普及するために奮闘しています。その彼が、これこそすごく大事なことだと言ってまた、中国ではこんな風に語られていますと紹介がありました。
恕=如+心(如実の心、如来という動じない心)、私は「他人の立場や心情を察すること、また、その気持ち、思いやりの心がトヨタウェイの幹に在ることを教えています。海外では、漢字をばらすと女、口、心が合わさって恕になっていることを理解して貰うために女は貴方の母、口はマウス、心はマインドでMind of your mother’s kiss.と伝えます。貴方が小さい頃お母さんがくれたキッスを思い出してください。その時、貴方はどんな感じがしましたか?またその時のお母さんの気持ちはどうだったかを考えてみてください。トヨタ生産方式を理解するためにはこの気持ちを前提に出来上がっていることを忘れないようにと教えています。
愛知県常滑市の小鈴谷小学校の前進の「鈴溪義塾」の理念の一つでもあります。小学校制度が出来る前にこのような塾があったのです。土地の豪商、盛田家が学びたい地元の若者のために作ったものです。この知多半島は古くから対岸の伊勢、津、近江、堺との船による交流が盛んだったようです。勿論海外との交流もあったのでしょう。開校当時から体育では野球、英語が必須科目だったそうです。ここで学んだ人達が名古屋、愛知県で活躍が良い影響を後世につないでいます。トヨタの中興の祖、石田退三、ソニーを興した盛田昭夫、敷島製パンの祖、盛田善平、鶏の養鶏を広めた榎本誠等など素晴らしい心を持った人達が出ています。
トヨタウェイ、トヨタ生産方式を語るには近江の文化、鈴溪義塾の教えが支えていることは明白です。石田退三氏は60歳で定年退職後、トヨタの3代目社長を30年、90歳まで務めています。千種高校の初代校長も横須賀高校出身、創立記念講演に石田退三氏が呼ばれ、2代目校長もこの「恕」を信条にしていると記念誌に投稿していました。また、最近は海外でも「知多」ウイスキーが大変人気があります。マレーシアの会社のパーティーでも飲まれています。知多の意味はと聞かれると「知識が多い」場所で作られた話をします。知多半島があり、古くから世界の知識が集まっているところでトヨタの文化、愛知県の教育の礎の町、日本人の精神文化を作っているという話をすると大受けです。