- さまざまな抵抗があります。
この抵抗も、トップが導入を決意した場合、顧客からビジネス継続のために押し付けられた場合、会社の中間管理職が見様見まねで始めた場合と状況によって違いはあるものです。
しかし、新しいことを始めようとするとさまざまな抵抗が発生するものである。世界中同じことのようだ。「7つのムダ」の言葉だけは良く知られているが、見えないもののムダとして従業員の能力を高めないムダ、新しいことに抵抗するムダを加えて「9つのムダ」というポスターを張っているのを見たことがある。
失敗事例を少し書いてみます。
- 見様見まねで管理職がよそでのカンバンの仕組みを見てきて、自社でやってみてうまくいかなくてTPSはうちには向かないのでやめた。もう一度挑戦しませんか?と言うと、「なんでまた導入しようとするのか、やってみたけどうまくいかないのでもうやりたくない。」
- トップがTPS導入を顧客から言われ社内にプロジェクトチームを作ってそこに責任を丸投げしたケース。
- うちの顧客はトヨタだけではないのでカンバンは通用しない。
- サプライヤーからTPS導入、カンバン運用の良くない理由を吹き込まれた購買部署が反対にまわる(本当はサプライヤーが導入してほしくないないのが理由)
- TPSは、日本人は出来ても海外では導入できない。(Cherry Picking のLeanなら出来るのか?と言いたいところ)
- 5Sもしかり。社内に張り紙はあるが、リーダー不在
- 現場の押し付け、首切りの道具だから導入したくない。(誰がそうさせたのだろうか?)
- 5S, TPM、A3レポート、VSM、KaizenをまとめてLeanだと考えていてどれから始めたら解らないので手がでないという会社もある。
- トップが変わる度に何か新しいことをしろと言うけどなに一つ成功したためしがない。またすぐにトップが変わるので適当にあしらっておけ、と言うものまであった。
- 以前、社長がコンサルタントを連れてきてTPSをやると言ってはじまったが、いまは何も残っていない。TPSって何? トヨタさん以外でやっているところはあるの? うちは無理だよ。
- Leanの導入でコンサルタントに来てもらいスタートしたが、標準作業を強調して実施してもらったら確かに何人かは必要なくなった。これがLeanだと言って帰ってしまいその後、次のフォローがない。(現地のコンサルタントでは自分でゼロから始めた経験がないので次の展開が出来ない、教えてくれというコンサルタントばかり)
- 高いお金を払って日本にLeanの勉強に行かせたけれども戻ってきても何も始められないので強く言ったら辞めてしまった。Leanはそんなに難しいのか?
などさまざまなことを言って抵抗する人、導入に困惑している人達はTPS=カンバン方式の域から抜け出せないケースが多いのではないでしょうか。兎に角よく言われるTPS, LeanのToolだけを取り上げて、出来る、出来ないを、語るケースがほとんどである。出来ない原因はToolを使用する順番が理解できてなく突然カンバン、生産管理板に飛びついて失敗するケースが多い。この場合もよく聞いてみると、「生産管理板がないのでこの会社はLeanではないと言われたのでインターネットで探して使ってみたが駄目だったとのこと。その日の生産予定も不明瞭、1週間の生産予定表で仕事をしているところに無理なことをさせるなと言いたいところ。社長が本当に導入したいのならば、継続的に面倒を見てもらう良い先生を見つけるには如何したらよいのか?これも大事なことでしょう。
- Leanを導入したいという会社があれば、まず社長と現場を一緒に歩き、社長が問題だと思っているところ、社長は何をどうしたいのか、を現場でよく話をすることからが始まりだと感じています。
- 紙飛行機を使ったゲームで流れを作ることの意味を体験してもらうことにもいい評価をもらっています。
- 「流れ」を作れそうな現場を選んで標準作業を試してみて流を作ることが出来高を増やせることを実感させる。これがワクワク感を持てる始まりでしょう。
- 流れが止まるさまざまな問題がはっきりと見えてくる。こんなに狭い範囲でもこんなに問題があったのか!チョコ停、部品の欠品、不良、手直しが多い、作業者のスキルのバラツキ、使えない作業要領書、残業の発生する理由、購入部品の品質の悪さ、技術部門、品質部門、など他部署でしなくてはいけないことを全部現場にしわ寄せがきていることを気づかせる指導も大切である。
- ここで社長も会社全体の強化をしなくてはいけないことを気づき、将来の部門別強化計画に自信を持たせることもワクワク感の高揚になると信じています。
- 全部門長も必ずこのトレーニングには参加をしてもらい、自分で悪さ加減を実感することによりTPS導入の抵抗もなくなっていきます。
- 現状を標準作業の3票を作るということは導入時には絶対に必要なものとして使っております。
- 標準作業の第1表、工程能力表を作成し、真の工程能力はいくつなのか?ボトルネックの工程は何処なのかをみんなで共有する。経理、IE, 技術がコスト計算につかう単なる機械サイクルタイムが示す能力との違いを確認する。
- 作業者が多いのか、足らないのか、が目に見える様になる
- 作業要領書を現場班長がリードして自分たちで作って、作ったものをみんなで守る癖をつけること。これをすると確実に品質が良くなり、問題がはっきり見えてくるので、製造部門だけに押し付けず、他部門も問題解決に参加すること。
- TPSを導入すると最初に効果がでるのは品質が良くなることも実感してもらう必要があります。これもワクワク感の高揚になります。
- 5S活動の実施も必要だと感じています。5Sの2S(整理、整頓)から導入して、徹底的に理解する。
目的は時間の節約意識向上と自分たちで決めたことを守る体質づくりから取り組むのは必要でしょう。全体に広げず、体格に合わせてモデルラインから始めるとよいでしょう。決めたことがなぜ守れないのか?その問題解決もチームで取り組むとよい。
- 兎に角必要ではないものが現場を占領していることにびっくりし、なんと在庫、仕掛りが多いのか? また。死蔵品、手直し品、品質の判定待ちのもの、試作品、修理後のスクラップ、修理部品の多いのに驚かされるでしょう。いかに責任部署不明品が広い面積を占めていたのか驚きます。
- 自工程で加工したものは、下流に流さないこと、自分たちの責任として機械、工程周りに保管する。FIFOも考慮すること。
- モノと情報の流れ図を信頼できる先生を招いて実際に現場に出て、出荷工程から遡って作ってみる。ある程度指導がないと、現状を書いてもあるべき姿は書けないし、どこから改善(流れ化)を進めるのかは書けないものである。世界中にVSM(Value Stream Mapping)が人気になっているがうまく使っているところは皆無です。どうやって使うのか混乱しているのが現状です。