5S説教

リーンランド研究所鈴木所長のアジアでの5S説教を紹介します。

5SとTPM

日本では昨今、5SやTPMの活動はほとんど聞かれません。しかし、世界を歩いていると5S, TPMを日本人から聞いてみたいというリクエストはかなり大きく感じます。5Sに関しては、「5Sは日本人しか出来ないのではないか。我々は日本人ほど躾が出来ていないので無理だと思う」。先生、どうですか? とびっくりするような質問が来たりします。床にペンキを塗って黄色のテープを貼っているところがあるけどあれはどんな意味があるのか。あれでいいのだろうか?という質問もありました。聞けばあまり良い先生も居ないようだし日本企業も多く出て行っているけれどそこからの影響力もみられないようです。5Sはマネージメントツールです。ですからマネージャーが5Sで儲けることを解らないと上手く使えないでしょうというと、え、5Sで儲ける? 聞いたことがないといいます。

海外での私の5S説教

5SはTPSの導入編です。トヨタでは今でも2S, 「整理」「整頓」だけです。勿論日本では5Sは一般的です。5Sの先生、5S本は沢山あります。5Sで生産性が30%上がるとう人もいたり、安全衛生、労災の削減に効果があるとか様々です。海外では6Sとか7Sを壁に貼っている会社もあります。でも本質は理解していません。わたしはTPS導入のベースとして無駄の排除(時間の無駄)ルールを守る訓練から教えています。Time is Moneyこれは全世界の人が納得する諺です。諺としてではなく実践しましょうと。いつも私は言葉の定義、漢字の持つ意味を教えています。

「整理」の定義は「必要なものとそうでないものを分ける」とは一般的に述べられています。何故そうするのか?それは無駄な時間の短縮、排除です。欲しいものを取り出すのにゴチャゴチャの状態から探して取り出すまでの時間を計ってみてください。必要な時間と必要でない無駄な時間が解ります。「整」は整えるという意味です。辞書では正しく戒めるとありますがわたしはもっと分解して「束」と「攻」を徹底的に追求することが正しいと教えています。「束」とは束ねる意味ですね。束ねるとは必要なものとして分けた中身をもっと細分化して束ねなさいと。良く眺めると毎日使う物と1週間に1回、1ヶ月に一回1年に一回使うようなものが混在しています。ここで職場リーダー、管理者のリーダーシップの発揮です。置き場所、置き方のルールを決めて下さい。「理」は物事の道筋、最もなことの意味です。私は加えて、「王」と「里」に分けて、王様の住む場所であり、誰もが理解して敬う所と説明します。これが「ルール」です。職場の皆でそのとき決めたルールに従うことです。必要でないものとしたものはリーダー、管理者の決意で廃棄指示をしてください。みんなで決めたルールを守ることが時間の無駄排除になり職場はスペースが出来、次の発想の下地が出来上がります。ここで大事なのは決めたルールに従わない物は厳しく注意してください。何故ルールに従え無いのか?何か不満、アイデアがあるのかこの指導力がリーダー、管理者の資質を養っていきます。PDCAの訓練の始まりでもあります。自分達でルールを決める、ルールに従ってみる、ルールは正しかったかチェックしてみる。もし、ルールが不備であれば変更して様子を見る、再度PDCAのサイクルを回す、会社トップはこの指導力が必要なのです。

次は「整頓」です。「欲しいものがすぐ取り出せる状態」これも「屯」と「頁」に分けて説明します。「屯」はたたむろする、悩む、苦しむとい意味もあります。それに「頁」の意味が一緒になっています。「頁」にはページ番号が付いています。分厚い本も目次とページ番号から見たい、読みたいところにすぐにたどり着けます。これらの意味を良く考えて整理で分けた必要品をもっと細かなルールで時間の節約を追求することが整頓です。ここで、JITの意味も一言いってやります。お客様が欲しいときに欲しいものを必要な数だけ素早く取り出す。そのような気持ちで整頓を考えて物の置き場所を決めることです。「三定」という人もいます。三定とは、物の置き場所を決めるときに「定位」・「定品」・「定量」が明確になっていればその品物を欲しい人が無駄な時間を使わずに目的の物を瞬時に取り出すことが出来るということです。「定位」は物の置き場所、所番地などで明確に表示すること。「定品」は品物の名前をはっきり明示しておき間違い、取り間違いを防ぐことを言います。「定量」置き場所の物の量を幾つにするかを決めます。多すぎてはいけません、皆で話し合って決めて下さい。その際、置く数の上限と下限を決めて、これ以上置いては異常です。下限は発注点ともいい下限に来たら決められた数を発注することを教えます。カンバンカードの役割のイメージ作りです。将来のストアー管理をイメージ付けしましょう。ここで忘れていけないのは工具なども整頓して皆に解るように置きましょう。これは欲しい道具をすぐに取れるように、使い終わったらもとの場所にすぐに戻せるように、誰かが使用しているときはそれが皆に解るようにするアイデアもあります。それがShadow Hangingといってボードに工具とその輪郭を描いたものがあります。どの道具が使用中であるかが皆に解るボードです。これも海外でよく見かけるものですが使い方のルール、意味を皆で共有しているところは皆無です。ここにもPDCAを回してシフト終了時全部の工具がボードに戻っているか?紛失しているか?を管理者はチェックする必要があります。状況によっては道具の数を増やすか、ミニボードを機械の近くに増設するか常に時間の無駄を排除するために状況を判断できる「目で見る管理」の仕組みなのです。

「清掃」です。「清掃」と「掃除」の違いを教えます。「掃除」は手で箒を使って床のゴミ、チリを除くことです。「清掃」は掃き清めることです。清めるとは氵は水を表します。青は「生」「井」の組合せと言われています。青く澄み渡った空のような井戸水は生きるためには必要です。漢字を交えて説明すると世界の人達は大喜びです。漢字の文字は意味があることは良く知っています。ここで清掃は床をだけではなく、自分達が毎日触っている機械の掃除も始めましょう、ここで、「清掃は点検なり」と伝え清掃中に毎日使っている機械なので異常を発見してもらいます。いつもと同じか、いつもより温度が高いか、音が何かおかしいか?などいつもと何か違うことを清掃後リーダーに報告してくださいと、ここでTPMのいう「自主保全」活動につなげましょう。「何かいつもと違う」この報告で機械の突然停止からくる長時間、高額な修理を省くことが会社の利益、不良発見につながります。

次は「清潔」です。「潔」の意味は汚れが無くて清らか。人の心情・行為に不純なものがない。という意味です。「契」の意味は約束とか誓いの意味です。それに氵がつきますのでより清く誓う、約束することです。5Sでいう「清潔」の意味は整理、整頓、清掃のルールを継続、維持することを言います。3Sの維持で異常の早期発見が容易になり大事に至る前に手が打てるので時間の節約、無駄なお金の節約につながります。

5番目のSは「躾」です。自身が美しくなることです。4Sを徹底的に行うことで自分の身も心も美しくなることです。5Sのルールに外れたものが異常です。誰もが異常の発見は容易に出来るようになりました。見つけた異常を基に戻す、その際に何故異常が発生したのか?3M(人、物、機械)の標準が悪いのか?その場ですぐ問題解決の行動に移れる人ずくりが躾の目的です。PDCA、問題解決の基礎を養うことが5Sの活動の意義になります。

5Sはルール(標準)を守れる人をつくる、異常を発見するための「目で見る管理」の導入編と考えて目的をはっきりして導入することが大事です。余所でみてきたマネをしても上手くいくものではありません。5SはTPS導入のはじめの一歩です。次は保全部門の強化を目的にTPM、自主保全へと進みましょう。5Sを徹底することで生産性が30%上がるというひともいます。TPMだけを徹底することで生産性を上げることも出来ます。私は保全部門の強化と教育のためにTPMの考え方を学ぶことをお勧めします。

マレーシアでは皆さんTPMにはおおいに興味があるようで良く訊かれます。どうしてTPMが知りたいのですか? 必ず返ってくるのがOEEを知りたいからと多くの人が答えます。OEE(設備総合効率)がそんなに重要ですか? OEEで会社は儲かりますか? OEEが何なのかも理解しないまま毎日数字を作っている経営者もおります。それはやってみないと解りません。こちらも良く解らない回答が出てきます。良く訊いていくと、リーンを導入したいことが本音のようです。日本で行っていることを導入することがリーンを導入することと思っているわけです。トヨタでやっていることをまねることがリーンを導入することなんですね。私の指導法は勿論5Sとは、TPMとはと個別に説明はしますが、いざ実施する時には2S(整理、整頓)をまづ徹底的に行いましょう。その後3S目(清掃)の段階で「清掃は点検なり」のTPMの活動に入って自主保全活動と5S活動を融合させて指導します。5SとTPMを別々の活動ではなくそれぞれの活動の目的を明確にしながら指導します。TPMではなくPM(予防保全)を保全部門の活動と使命を明確にしながらTPSの導入へと導いていきます。TPMで設備のロスを徹底的に減らして加工可能時間を最大限にしてOEEの数字を上げて必要のない物を加工して在庫を増やすことは最大のムダですよと教えて行きます。それよりも稼働中の設備が突然停止してお客様に迷惑を掛けないこと、設備を動かしたいときに正常に稼働すること出来るようにすることが大事ではないですか? 保全部門を強化することが必要ですと強く教えています。JIDOKAを支えるのも保全部門、エンジニア部門の助けなしでは成功しません。JITでも少人化ラインを支えるにもエンジニア、保全マンの支援が必要です。この部門の強化を忘れないようにしましょう。TPSを実践していく過程では保全部門の役割は重大です。世界、とくにアジア、中国では保全部門は曖昧ですし、その重大性を説いても聞く耳もありません。ただ、米国では面白い経験をしました。米国の作業者は機械、設備故障修理に関しては高いスキルを持っています。これは米国に住まないと解らないかもしれません。家の設備不良、芝刈り機の故障、自動車修理は必ず起こります。でも日本のような緊急修理屋さんを呼んでもすぐには来てくれません。ホームセンターも車で何時間も走らないとありません。彼等の家の外には大きなガレージがあります。ガレージに入ってびっくりです。壁には様々な工具が整理整頓されています。補修部品も在庫が容易されています。皆さん結構自分達で修理しています。

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